算数の本の執筆を考え、著作権について検討してみた

法律

皆さん、こんにちは

チョークです

Kindle本への興味

最近、ものは経験ということでKindleで何か本を出す経験をしてみようかなと思っているのですが、何をネタにするか悩んでいました

そんな折、特殊算について対話形式の原稿(つるかめ算の一部はこのブログでも掲載済み)をつくってうちの子どもに見せたところ、自分でも分かると言ってもらえたので、子どもが計算ドリルや百ます計算で計算力特訓をしているうちに、「受験算数の分野別の対話式解説書を書いてみようかな」とふと思い立ってしまいました

ボクの受験算数の勉強状況

「何を門外漢がとち狂って!」と聞こえてきそうですが、子どもに教えるために受験算数の参考書・問題集についてはもう30冊ほど買ってしまいました。

それらについて、一番興味のあった特殊算分野を中心にざっと斜め読みしてみて、何とか自分の中で消化して分野別の一冊くらいなら書いてみることもできるかな?なんて思っている次第

とはいえ、偏差値30をうろついているうちの子どもがメインで想定する読者なので、難しいことを書くというよりは、基本的な考え方とパターンを説明したものを作ってみようかな?というのが正直なところ

著作権は大丈夫?

当然、執筆に当たっては自分の中でかみ砕いたものをアウトプットするわけなので、結論としては著作権的な心配はないんですけど、問題集や参考書の著作権ってどうなっているのかな?と思い、一応法律をメシの種にしている身として、そのあたりについて検証して書いてみようかなと思い立った次第です

そもそも著作物って何?著作権って何?

著作権法(以下「法」といいます。)によれば、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(法2条1項1号)と規定されています

ここでは二つの要素があって、「思想又は感情」自体が保護されるのではなく、これらが、「創作的に表現」されて初めて法的に著作物として保護されるものとされています
ただ、「思想又は感情」については、例えば哲学のような高度な思想まで要求されるものではなく、人間の精神活動に基づく思想又は感情であれば足りると解されています
また、「創作的」というのは、高度な芸術性や学術性までは要求されず、個性が表現されていれば足りるものと回されています

アイデア・表現二分論

著作物として保護されるかどうかを決する一つの基準として、アイデア・表現二分論という基準(考え方)があります
これは、著作権法上、思想や感情それ自体やアイデアは保護されず、創作的な表現のみが保護の対象となるという考え方です
この考え方を敷衍すると、いかに優れた高度な思想やアイデアであったとしても、それら自体は著作権法上の保護の対象とはならず、何らかの形で表現された段階で初めて当該表現が著作権法による保護の対象になる、ということになります
例えば、学者が学説を発表したとしても、その学説のアイデアそれ自体は保護されず、そのアイデアが個性を伴って表現された場合にその表現自体が作権による保護の対象となるのです。
これは、思想やアイデアについては、特定の人にその独占を認めず、社会一般に自由な利用を許す方が、文化の発展に資することとなることから、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的」(法1条)とする著作権法の趣旨に合致することになるからです

以上の考え方からすると、一見表現に見えるものもアイデアにすぎなければ著作物として保護されませんし、仮に表現であったとしても著作者の個性が伴っていない「ありふれた」ものにとどまるかぎり、創作性の要件を満たさず、やはり著作物として保護されないということになるわけです

算数の問題ってどうなの?

そうすると、算数についてはどういう結論となるでしょうか?

例えば、ボクがこれから作ろうとしているKindle本は、著作物となります
なぜなら、対話形式で分かりやすい会話文がボクの個性に基づいて叙述されるわけですから、創作性を伴った表現ということができる(ものになる予定)だからです

他方、数式などは著作物になりません
たとえば、「1+1=2」というのは、数学的法則から一義的に導き出される結果でしかなく、没個性的なものですから創作性の要件に欠け、著作物に該たる余地がないということになるからです。

他方、文章題はどうでしょうか?

単純な式の問題ではないですから、著作物と認められる可能性も出てきます

例えば、適性検査のような形で国語と算数が融合している問題だったらどうでしょう?おそらく著作物として認められることになるのではないでしょうか。

逆に「50円玉と100円玉をあわせると全部で25枚あり、金額は2050円になります。50円玉と100円玉はそれぞれ何枚ずつありますか」といった一行問題的な無駄をそぎ落とした文章題だとどうでしょう?

このような典型的なシチュエーションはまさに「ありふれた」表現であり、独創性がないという見方をすれば、そもそも著作物にあたらないと考える余地があります

また、仮に50円玉と100円玉を使って問題を問うことに独創性がある(ホンマかいな!)との前提にたったとしても、ここに現れている

  x+y=25
  かつ
  50x+100y=2050
  
 というアイデアそれ自体は著作権法上保護されませんので、上記の連立方程式をもとに、つるかめ算の問題となるシチュエーションを自分で作ってしまえば、例えば円をドルに変えてみたり、あるいは50円玉を500円玉、100円玉を1000円札に変えるなど、表現をいじってしまえば著作物の盗用ではなくなります

以上を踏まえると、少なくとも問題単位であれば、その問題を一旦アイデアまで抽象化し(上記の例でいえば、つるかめ算の問題文から連立方程式にし、そのアイデアをもとにシチュエーションを設定すれば、確実に著作権侵害のリスクを回避できることとなります

ただ、現実的には、上記の「具体的問題→抽象化→別シチュエーションの問題に具体化」という面倒な手順を経ず、「具体的問題→別シチュエーションの問題」としても結果的に同一アイディアを別表現で表すことになりますから、結果的に著作権侵害のリスクを回避することができるということになります

一冊丸パクリしても大丈夫なの?

「算数の問題には著作性がないか、極めて低いのであれば、問題集一冊を丸パクリしても大丈夫じゃない?」なんて疑問を持たれた方もいるかもしれません

ですが、この場合、答えは「著作権侵害になる」です

というのも、法12条1項は、「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」と規定しており(これを編集著作物といいます)、これによって編集著作物には著作権が認められることとされているからです

そして、編集著作物については、①素材は単なる事実、データ等であっても、②独自の一定の目的、方針に従い素材の選択、配列を確定したものである場合には、著作権が認められると解されているのです

そうすると、数式や問題が仮に単なる事実或いはデータにすぎないとしても、教育効果を出すという方針に従って素材となる問題を選択し配列した問題集には著作権が認められるということができるのです

結局チョークは本を出すの?

長らく弁護士の仕事ばかりしていて、受験算数に触れてちょっと楽しくなってしまっていることと、いつもKindle本を愛用している身からすると、一度Kindle本を出してみたいという気持ちはあります

ただ、実際に出せるかどうかは、本業と親塾に取られる時間との兼ね合い・・・

もし本当に出版したら、本ブログで報告したいと思います

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